「年収の壁」に新たな制度で向き合い、従業員の働く意欲を守りたい。
「安心して働ける職場づくり」で従業員のエンゲージメント向上を目指す。
- 社会保険加入促進コース
有限会社サウンドオフィス・コア
代表取締役 菊永良枝さん
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事業内容
セレモニー・ブライダル・ホテル、レストランでの演奏者派遣事業・音楽、映像制作等・音楽教室運営等
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従業員数
社員2名、パート約20名
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創業
28年(1997年 設立)
結婚式場・ホテル・葬儀場へ演奏者派遣事業を行う同社は、「年収の壁」による演奏者の働き控え解消のため、社会保険加入促進手当を新設。安心して長く働ける職場づくりを通じて、従業員のエンゲージメントならびに企業価値の向上を目指す。
本事例の3つのポイント
- 今後の社会保険適用拡大を見据え、先んじて制度改正に着手
- 専門家(社会保険労務士)による無料の個別相談2回を最大限有効活用し、スムーズに規則の見直しを実施
- 人に投資する会社の姿勢を見せることで、従業員とその家族からの信頼を獲得
制度導入の背景にある「年収の壁」
本奨励金を申し込んだ背景やきっかけについて教えてください。
弊社は配偶者の扶養内で働く女性パート従業員の方が多く、毎年年末が近づくと税金の扶養の範囲内から外れないように勤務調整をする方の増加が常態化していました。一方で、「演奏者としてのスキルを活かし、もっと現場に出て活躍したい」という本音を持っている方も多く、働きたいのに働けないというもどかしい現実から現場が人員不足に陥るという、不本意な事態が生じていました。
さらに近年、社会保険の段階的な適用拡大が進んでいることも、きっかけのひとつになりました。近い将来、すべての企業の社会保険加入要件が週20時間となることを見越して「働きたい人が制度によって労働時間を制限されず、思う存分活躍できる環境整備」の必要性を強く感じていたのです。
そこで検討したのが、社会保険加入を前提とした働き方の推進です。社会保険の新規加入者に手当を支給し、手取り減少の不安を少しでも軽減できれば、働きたい人の意欲を後押ししつつ、安心して働ける環境を提供できるのではと考えました。
個別相談でのフォローと丁寧な社内研修により、
手当の新設をスムーズに完了
「社会保険料に関する手当の新設」はどのように進めましたか?

手当の支給対象は「社会保険に新たに加入する非正規雇用者」に限定されるため、まずは弊社の社会保険の加入要件を確認しました。弊社は、従業員が51人未満のため、週所定労働時間及び月所定労働日数がフルタイムの4分の3以上で加入の対象になります。次に、今後対象となりえそうな従業員を確認したうえで、手当の支給を制度化できるよう、就業規則への手当条項の追加と、労使協定の整理を進めました。
専門家(社会保険労務士)による2回の個別相談は、専門性の高い就業規則の作成において大きな安心材料になりました。手当の支給額を定額制ではなく、給与に対しての定率制にする場合、一般的には支給する側の業務工数が増えるデメリットがあると説明を受けましたが、対象となる従業員が少ない弊社においては支給に伴う業務工数も大きくないと判断し、定率制を採用しています。
個別相談では疑問や不安に感じていることに対して丁寧に説明していただきフォローもしていただけたので、「これなら安心して新設制度を導入できる」という確信を持てました。
手当の新設にあたって、従業員の理解を得るために行った
工夫があれば教えてください。

手当の新設に関して反対の声はなかったのですが、率直に言うと、国の「社会保険の仕組み」についてしっかり理解している人は少なかったように感じます。若い世代の一部からは「社会保険に加入すると、保険料が給与から想像以上に引かれる」という率直な声も挙がっていました。そのため、社会保険加入の意義や今回新設した手当の仕組みなどについて、研修を開いて従業員の声にも耳を傾け、しっかりとわかるまで説明しました。
また、家庭を持っている従業員が多い弊社では、働く本人だけでなく、その家族の理解も不可欠です。特に基幹業務である葬儀での音楽生演奏は特質上、急な仕事の依頼が入ることも少なくありません。そんな時、家庭内での協力体制、つまりパートナーの理解の有無は、従業員が現場に出られるかどうかを大きく左右します。こうした理由から、今回の研修でも資料を配布する際に「必ずご家族と一緒に目を通してください」と従業員の皆さん全員に声がけを行いました。
音楽業界ではこうした制度整備を行う企業は多くないため、今回の取組を通じて、従業員やその家族からの信頼度が以前よりも高まり、「この会社は従業員に投資してくれている」「安心して働ける職場だ」と言ってもらえる場面が増えたように感じます。
安心して働ける環境づくりにより、
従業員の働く意欲を応援したい。
この取組にあたって、社長ご自身が大切にされた思いがあれば教えてください。

今回の社会保険料に関する手当の新設は弊社にとって、「損得勘定ではなく、会社に貢献してくれる従業員を支えたい」という思いを形にしたものでした。
私自身、個人で演奏者として活動していたころは、「現場で背負う責任に対してその対価が見合わないことへの疑問」を強く感じてきました。
たとえば、拘束時間が大幅に伸びても報酬が変わらない、遠方の現場でも交通費が自己負担のため手取りが減ってしまうなど、このような“業界の常識”に対する違和感に経営者として向き合うため、「現場でがんばる従業員が報われるような仕組み作り」に取り組んできたのです。
その一例が「演奏者の直接雇用」や、「現場の実態に即した報酬制度」であり、そして今回の手当制度の導入です。これまでの取組により、演奏者が安心して働ける環境を整え、その結果長く働き続ける意欲や会社へのエンゲージメントにつながるのではないかと考えています。
最終更新日:2026年01月21日
よくあるご質問(FAQ)
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Q.会社の従業員数が10人未満で、就業規則の作成や労働基準監督署への届出をしていません。奨励金の申請にあたっては、いつまでに対応が必要ですか。
会社全体の従業員数が10人未満でも、本奨励金の申請においては、事前エントリー日までに就業規則を作成し、交付申請日までに所管の労働基準監督署へ届け出ていることが必要です。さらに、就業規則には、施行日(事前エントリー日までに施行されているもの)が明確に記載されている必要があります。
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Q.社内研修で使う資料は、奨励金特設WEBサイトに掲載されているものを必ず使用しなくてはいけないのですか。
あくまで一例であり、当該資料についての使用は奨励金の要件ではありませんので、事業主のご判断にお任せいたします。事業主で研修資料をオリジナルで作成しても構いません。