「女性の働きやすさ」と「多国籍な現場」を支える新・賃金体系。
創業70年の老舗が進める、時代に即した手当の再設計。
- 配偶者手当見直しコース
東信化学工業株式会社
管理部部長 山崎 貴史さん
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事業内容
FRP(強化プラスチック)製品の製造・販売
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従業員数
社員52名、パート4名
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創業
74年(1952年)
共働き世帯の従業員が9割を占め、かつ、外国人従業員が工場の主戦力となっている同社は、「家族手当」を廃止し、現在の従業員の家族形態や子育て期の教育支援に重点を置いた「子育て支援手当」を新設。現行の賃金体系からの改定による不公平感や不利益が生まれないよう、経営層と協議を重ねながら誰もが納得でき時代に合った賃金体系への移行、その再構築に人事労務担当の責任者として取り組んでいる
本事例の3つのポイント
- 社会保険の扶養を条件とした「家族手当」を廃止し、教育支援を重視した「子育て支援手当」を新設
- 人事労務担当者が現場の実態を起点に、グローバル化と人材の多様化を受け、従来の手当制度を見直し、支給基準を明確化
- 女性やワーキングマザーの積極採用を柱とした、新たな採用戦略への転換
創業70年の老舗が直面した「旧手当」と「実態」のギャップ
今回制度を見直すことになったきっかけを教えてください。
当社は、創業から70年以上、家族経営のかたちで事業を続けてきました。従業員とのアットホームな距離感が現場を支え、今につながっていると感じます。一方で、現在は3代目となる現専務への社長継承を控えており、「時代の変化や従業員の家族構成、多様性を活かした組織」へと歩みを進める中で、本社は女性活躍推進、工場は外国人採用が中心という今の現場の実態に即した賃金制度作りの必要性を感じるようになりました。
加えて、プラスチック製造業界全体を見ても、市場は今後大きな成長が見込める状況とは言えず、こうした状況の中で会社が持続的に成長していくためには、これまでの古き良き時代のやり方を大切にしながらも、今の時代に合った、従業員が納得できる制度へとアップデートしていく必要があると考えました。
そこで、賃金制度全体の見直しに着手し、家族手当のあり方についても社内で検討を進めていたところ、「東京しごと財団」のHPで本奨励金を知り、すでに進めていた配偶者に係る手当の見直しの方向性とこの奨励金の趣旨が合致していたことから、今の検討を活かしながら活用できると判断し、手当制度の再設計に踏み切りました。
「現場の実態」に即した賃金制度作りの必要性をなぜ感じたのでしょうか。
従来、当社では、社会保険の扶養範囲内にある配偶者および18歳未満の子どもを扶養する従業員を対象に「家族手当」を支給していました。しかし、近年、配偶者が扶養から外れるケースが増加しており、現在では従業員の9割が共働き世帯となっています。また、当社では日本人スタッフの高齢化が進む一方、工場の現場を支える若い労働力の大半が外国人従業員であり、今その割合は全従業員の約3分の2を占めるまでになっていますし、採用もしばしば外国人となっています。
こうした変化を背景に、従来の賃金制度が従業員のニーズと少しずつ合わなくなってきつつありました。
そこで、当社で働くどの従業員にとっても制度の趣旨が分かりやすく、理解が得られるような新たな賃金制度への刷新が必要と考えました。
家族手当を見直し、「子育て支援手当」で教育期をサポート
どのような方針で新制度を導入したのでしょうか?

従来の「家族手当」は、「配偶者や子どもを扶養している従業員」を支える制度でしたが、配偶者に対する手当を廃止し、従業員の子どもの教育支援に特化した「子育て支援手当」へと改めました。
新賃金制度は、「会社としてどの層を重点的に支え、どのような人材を採用したいのか」という採用戦略の観点から再設計する必要がありました。そこで今回の見直しでは、今後当社が積極的に採用し、定着してほしいと考えている「子育て世代」や女性のニーズを重視した制度へと見直しました。支給額は、教育費の負担が大きくなる時期を踏まえ、小・中・高の成長段階に応じて設定し、対象は18歳までとしています。あわせて、支給要件についてはコスト面や運用面も考慮し、一定の基準を設けた持続可能で現実的な制度としています。教育費の負担が増す時期を支える仕組みに変えることで、子育てが始まる世帯や若い世代が将来の不安なく、長く安心して働き続けられる環境を目指しました。
制度の見直しはどのような流れで進められましたか?その中で手当の振替を行う際に意識したポイントを教えてください。
今回の見直しは、経営層からのトップダウンではなく、人事労務を担当する立場として、日々の実務の中や現場で感じていた課題を整理し、制度案として検討していたことが出発点でした。
新設する制度の検討にあたってはまず、家族手当を廃止することで手取り額が減少し、不利益を感じる従業員がいないように配慮しました。具体的には、毎年11月の給与改定のタイミングに合わせて新制度を導入し、手当の新設による影響を調査。必要に応じて基本給で調整を行い、全員が損をしない形で設計しています。
そして、この奨励金の専門家(社会保険労務士)への個別相談では奨励金制度のより一層の理解や具体的な検討に大いに役立てました。 1回目は「子育て支援手当」の金額設定や大学生までの対象範囲など仮案を提示し、「世間一般と比べて妥当かどうか」を確認。2回目では、他社事例や運用のしやすさに基づく具体的なアドバイスを受けながら、制度設計の精度を高めました。
制度見直し後の従業員への周知は、24時間交代制の現場勤務を踏まえ、録画が残るコミュニケーションツールを活用し研修を実施しました。特に外国人に対して説明をつくし、制度の浸透を図りました。さらに、個別の契約更新時には、一人一人に制度改定の背景や意図を説明しました。結果として、全体として反対の声は特に上がらず、新制度は現場にもスムーズに受け入れられたと感じています。
女性の活躍と多様性を支える手当制度へ
制度の見直しを通じて、今後どのような効果を期待していますか?

子育て世代や若い世代が働き続けやすい環境を整備し、女性やワーキングマザーを積極的に採用・定着させていきたいと考えています。これは、今後当社が力を入れていきたい取組の1つです。
制度そのものがすぐに応募の決め手になるとは考えていませんが、「この会社は時代に沿った柔軟な組織である」「変化し続けようとしている会社だ」と求職者に感じてもらえることが、応募や入社を検討する際の後押しになればと考えています。今回の制度改定は、そのためのひとつの“とっかかり”になったと思います。なお、当社ではもともとフルタイム勤務だけでなく、空いた時間を活かして働けるフレキシブルな勤務制度も整備しており、こうした仕組みとあわせて、女性活躍推進の方針を採用戦略に十分に反映しています。
最終更新日:2026年02月25日
よくあるご質問(FAQ)
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Q.配偶者手当の支給実績がわかるものとして、1名分の賃金台帳の提出が必要とのことですが、いつの期間を提出したらよいですか。
事前エントリー日から遡り過去5年以内の期間で支給していることがわかる資料を提出してください。
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Q.就業規則の施行は実績報告後でも問題ないでしょうか。
取組期間内かつ改定日から1ヵ月以内に制度改定のうえ、施行されていることが必要です。
